成約案件インタビュー

【成約事例インタビュー】「この味を、続けてほしい」ジェラテリア72が宮崎トヨタグループへ託した、まちのジェラート

宮崎市で、地域の食材を使ったジェラートをつくり続けてきた「ジェラテリア72」。2021年7月の開業から約4年半、地元の生産者やお客さまに親しまれてきたこのお店は、オープンネーム事業承継「relay(リレイ)」を通じて、新たな担い手へと託されました。

継ぎ手となったのは、宮崎トヨタグループです。80年以上にわたって宮崎に根ざし、自動車の販売・整備だけでなく、地域とのさまざまな関わりを重ねてきた同社。

近年は事業承継を通じ、地域に必要とされてきたお店を次の世代へつないでいく取り組みにも力を入れており、昨年relayにてドーナツ店「MAHALO DOUGHNUT LABO(※)」とのマッチングを実現。それに続く形で、今回あらたに「ジェラテリア72」の味と営みを引継ぎ、新店舗「Hi,Gelato(ハイジェラート)」としての一歩を踏み出しました。

「奥さまがいないお店は、ジェラテリア72ではない」。そう語っていた譲り手ご夫婦の想いと、「このお店は、この場所に必要だ」と感じた継ぎ手の想い。2026年5月にリニューアルオープンを迎えたお店で、譲り手・継ぎ手・新店舗のみなさまに、承継のきっかけや面談での印象、そしてこれからについてお話を伺いました。

譲り手:ジェラテリア72 平賀翔大様・亜希子様
継ぎ手:宮崎トヨタ自動車株式会社 代表取締役社長 佐土嶋健様/エムティーホールディングス株式会社 事業開発部 池田将克様
新店舗:Hi,Gelato 事業責任者 川野清楓様/店長 中村美友様/製造責任者 濱砂禎浩様
聞き手:relay編集部

「この恵みを、届けたい」から始まったお店

 ― relay編集部(以下、略):まずは、平賀さんが育ててこられた「ジェラテリア72」について聞かせてください。

(譲り手)平賀亜希子様(以下、敬称略):宮崎に移住してきたばかりのころ、「こんなにあたたかくて、おいしい果物もたくさんあるのだから、この恵みをジェラートで届けられたらすてきだね」と、二人で話していたんです。それが始まりでした。宮崎の生産者さんと関わるうちに、その魅力をお店を通して伝えていきたいという気持ちが強くなっていきました。

 ― 続けてこられるなかで、大切にしてきたことはありますか。

(譲り手)平賀翔大様(以下、敬称略):本当においしいものを届けたい、という一心でした。ジェラートは食材の味がそのまま伝わります。食材そのものがいちばんおいしいならそのままで、少し手を加えることでその魅力がより伝わるものは、丁寧に仕上げてお届けする。ただ商品を売るのではなく、生産者さんの想いや、酪農家さんの想いを、僕らを通してお客さまに届けられたらと思ってやってきました。

平賀亜希子:お客さまの「おいしい」という声を生産者さんに伝えると、とても喜んでくださって。それが私たちもうれしかったですし、宮崎に長く住んでいる方が「あらためて宮崎の魅力を知れた、ありがとう」と言ってくださることも、大きな励みでした。

「閉めよう」から「残したい」へ

 ― 承継を考え始めたきっかけは、どのようなものだったのでしょうか。

平賀亜希子:きっかけは、私の体調のことでした。もともと二人でやっていくことしか考えていなかったので、二人で続けられなくなったとき、一度は閉めようと思ったんです。

平賀翔大:すごく葛藤しましたね。

平賀亜希子:でも、閉店をお伝えしたときに、想像していた以上にお客さまが悲しんでくださって。「このジェラートが食べられる場所を、なんとか残したい」と思うようになりました。

 ― 続いて、継ぎ手の宮崎トヨタ・佐土嶋さんにお聞きします。まずは、御社について教えてください。

(継ぎ手)佐土嶋健様(以下、敬称略):宮崎トヨタは、地域の皆さまに支えられながら自動車の販売・整備を続けてきた会社です。あわせてエムティーホールディングスという会社を立ち上げ、販売店とのシナジーを生みながら、もっと地域に愛される事業をつくれないかと取り組んでいます。私たち自動車販売店も、根っこにあるのは「地域で愛されるお店でありたい」という想いなんです。

 ― 少し前に、relayを通じて「MAHALO DOUGHNUT LABO」も引き継がれていますね。事業を受け継ぐことに、どんな印象を持たれていましたか。

佐土嶋:「MAHALO DOUGHNUT LABO」を引き継いだとき、これまで大切に事業を続けてこられた方の「おいしいものをつくりたい」という想いや、それを支えてこられたお客さまとのつながりを残すことに、大きな社会的な意義を感じました。せっかく続いてきたお店をなんとか引き継いで残せたら、自分たちも幸せだなと、そう感じていたんです。だから「ジェラテリア72」の閉店を知ったときも、これは絶対残すべきだ、と強く思いました。

 ― 例えばレシピだけを受け継いで、宮崎県内のKEY’S CAFÉ(運営:エムティーホールディングス株式会社)でジェラートをつくるという選択肢もあったかと思いますが、あえてこのお店を残したいと思われたのですね。

佐土嶋:この場所には、この場所を愛してくださるお客さまがいます。KEY’S CAFÉとはまた違う良さがあると感じました。実は私自身、週に一度はこの店舗の前を通っていて、「おしゃれなお店ができたな」とずっと気になっていたんです。子どもと訪れて、そのおいしさを体験したのが最初でした。惹かれたのは、なによりも事業の内容そのものでしたね。

 ― 平賀さんは、初めてrelayから後継者募集について話があったとき、率直にどう思われましたか。

平賀亜希子:最初は「怪しい」と思いました(笑)。でも、お会いしてみると、単なるビジネスとしてではなく、私たちのやってきたことや想いを引き継いでいきたいと言ってくださって。それがとても印象的で、うれしかったです。「なんで、こんな小さなお店を見つけてくださったんだろう」という驚きもありました。ずっと寄り添ってお話ししてくださっている、という印象は、今でも残っています。

平賀翔大:自分たちの力で探すことには限界があります。お店の想いをしっかり届けていただけるのか不安もありましたが、relayさんは宮崎の地元に強いという印象があったので、安心してお願いできました。

 ― 池田さんは平賀さんご夫妻と面談する際、不安はありましたか。

(継ぎ手)池田将克様:ありました。平賀さんがSNS等で「奥さまがいないお店はジェラテリア72ではない」と話しておられたのを知っていましたから。これまで積み重ねてこられた歴史や想いのなかで、「承継させてください」と伝えることを、どう受け止められるだろうかと。このお店と商品はお客様とこの地域に必要だと思いました。

 ― 複数の候補者とお話されていたとのことですが、決め手はどこにあったのでしょうか。

平賀亜希子:「ジェラテリア72」に来てくださっていたお客さまが、一番喜んでくださるのはどこだろう、と考えました。その答えが、宮崎トヨタさんでした。

佐土嶋:決まったときは、本当にうれしかったです。relayの担当者さんもすごく喜んでくれて、私たちの想いが伝わって良かったと安心しました。

味と想いを受け継ぐ、新店舗チームの一ヶ月

 ― 新店舗「Hi,Gelato」の中村さん、濱砂さんにお聞きします。ジェラートづくりは、いかがでしたか。

製造責任者 濱砂禎浩様(以下、敬称略):とても難しかったです。マシンからジェラートをバットに移すタイミングや、溶けやすいなかで形を仕上げること。感覚をつかめるようになるまで、時間をかけて練習を重ねました。

店長 中村美友様(以下、敬称略):見えているところ以外の仕事が本当に多くて、そちらのほうが大変でした。マシンの清掃も、毎日丁寧に続けないといけない。盛り付けも、細やかなことの積み重ねなんだと実感しました。

 ― レシピどおりで、あの味は再現できるものなのでしょうか。

中村:レシピどおりでうまくいくものもありますが、果物によっては糖度が違うので、「このときはグラニュー糖を少し減らして」と細やかなアドバイスをいただいています。でもすぐには感覚がわからなくて…平賀さんに計算式まで教えていただきました。今でも、頻繁に相談しています。

 ― 準備期間はどれくらいだったのですか。

中村:一ヶ月です。畑違いの世界で、考えることも多くて大変でした。それでもお店に立つと、お客さまが笑顔になってくださって、想いも伝えてくださる。私たちが提供するつもりが、逆にお客さまからパワーをいただいています。「ジェラテリア72」のすごさを、毎日実感しています。

平賀翔大:中村さんと濱砂さんが本当に素敵な方で。僕らが大切にしてきたやわらかい雰囲気が、そのまま引き継がれているように感じて、とても安心しました。

平賀亜希子:これはもう本当に、佐土嶋さんの人選がすごいなと。お店に来ると、みゆ店長(中村さんの愛称)の笑顔で元気になりますし、濱砂さんも丁寧につくってくださっている。マシンも大切に使ってくださっているのが、節々から伝わってきます。

車とジェラートで、まちがつながる

 ― これから、Hi,Gelatoをどんなお店にしていきたいですか。

中村:まずは、平賀さんがつくってこられたファンの方や、これまで来てくださっていた方を、しっかりと引き継いでいきたいです。そのうえで、まだこのジェラートに出会えていない方にも、少しずつ広げていけたらと思っています。宮崎トヨタのお客さまとはまた違うお客さまにご来店いただいていて、お互いに良い相乗効果が生まれたらうれしいです。

(継ぎ手)事業責任者 川野清楓様:これまで宮崎トヨタが接してきたお客さまとは、まったく違うお客さまと出会えています。このお店にとっても、私たちは新しいお客さまをお連れできる存在かもしれません。販路を広げていく方向性もあるのかなと考えています。

中村:宮崎のおいしいものをつくっているので、いつか県外の方にも届けていけたらと思っています。

平賀亜希子:私たちもこれから、また生産者さんを訪ねて出かけようと思っているところです。いいものに出会えたら、そのままご紹介して、使っていただけたらうれしいですね。

 ― 最後に、この場所を、どんな場所にしていきたいですか。

中村:わからないなりに、がむしゃらにやっている毎日です。それでも「今日はこのジェラートを食べるために頑張った」と言って来てくださる方がいて、本当にうれしくて。ジェラートを通して、ジェラートに関わる人を通して、うれしい日も落ち込んだ日も立ち寄れる。そんな居心地のいい場所にしたいと、オープン前からずっと思っています。

「手放す」のではなく、「続けてほしい」という声に背中を押されたことで生まれた、今回の承継。譲り手である平賀さんご夫婦が積み重ねてきた味と、生産者やお客さまとのつながりは、地域に根ざして活動してきた宮崎トヨタグループのもとで、「Hi,Gelato」としてあらたな一歩を踏み出しました。

車の会社が、ジェラートでまちとつながる。店舗や設備だけでなく、そこに込められた想いごと受け継がれていく承継は、これからも宮崎のまちに、やさしい変化を届けていくのかもしれません。

※MAHALO DOUGHNUT LABO:エムティーホールディングス株式会社が引き継いだドーナツ店。現在は店舗販売だけでなく、同社が運営する「KEY’S CAFÉ」内でも販売されています。(relayでの後継者募集記事はこちら:https://relay.town/entrustments/mahalodoughnutlabo

 

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