
京都・伏見稲荷大社のすぐそばで、かつお節製造と乾物卸しを営む株式会社越後屋は、1965年創業。創業者である先代が新潟出身だったことが屋号の由来です。2代目社長として後を継いでいるのは、息子の伊藤隆之さん。現在は、かつお節製造・乾物卸しを中心に、「京カレーうどん ECHIGOYA」のパートナーとしても厨房に立っている伊藤さんにお話を伺いました。
サラリーマンから京都への帰郷、そして覚悟への道
伊藤さんは、35歳まで家庭用品の雑貨営業マンとして、全国各地の百貨店に飛び回る日々を送っていました。「創業者である父親が60代に差しかかった頃、漠然と『いずれは会社を継ぐんだろう』と思いながら帰郷しました」と伊藤さん。
仕事を覚えるために、まずは営業まわりと「削りの補助」を担当していた伊藤さんでしたが、帰郷してすぐに事態は一転します。帰郷まもなく、先代が大動脈瘤で入院。1か月間に渡って伊藤さんが業務を代行せざるを得なくなったのです。
「機械の電源の場所すら知らなかった、刃の替え方もわからなかった。かつお節の蒸し方、原料の発注の仕方、発注先のことなど、何から何までもわからない状態でした」と伊藤さん。「このままだと丸一か月、営業が止まってしまう。もうやるしかない」と覚悟を決めたと振り返ります。
当時は、スマートフォンなど便利な通信手段がない時代。紙に機械の絵を書いて、病院に持っていっては先代から『ボタンはここだ』『刃の替えるのはここから、この方向で』と絵を指差しながらレクチャーを受け、事務所に戻って、実際に機械を動かす……という方法を毎日続けたそうです。
覚悟と期待からの販路拡大への道
先代は退院後、リハビリを兼ねて事務所で仕事をされていたそうです。この時点で、業務の主導は伊藤さんへ移行しました。「後を継ぐことに対しては、不安はありませんでした」と伊藤さんは話します。「扱うものが “かつお節” “乾物” に変わりますが、物を売ることに差はない。雑貨営業のスキル活かしつつ、さあ、これからどう販路を広げていこう!」と期待の方が大きかったとのことです。
分からないことは先代に質問しながら、伊藤さんのできることを増やしつつ、卸し先を開拓する営業にも力を入れていきました。
現在は、BtoBの取引先がメインで、京都を中心とした料亭、うどん屋、小料理屋など、料理にお出汁を使うお店などに卸しているそうです。また、滋賀県大津市などの学校給食は越後屋のお出汁を使っています。
大手に真似できない、鮮度とオリジナル

京カレーうどんECHIGOYA の誕生

現在は形態が変わり、2023年10月から 京カレーうどん“ECHIGOYA”のパートナーとして、お店に入っています。洗練された内装で女性1人でも入りやすいお店です。越後屋の出汁にスパイスを組み合わせた斬新なカレー出汁は、地元メディアでも高評価されています。「実際に調理場に立って、飲食店経営を経験したことで、卸先にも提案がしやすくなりました」とのこと。

越後屋の次なる挑戦——小売展開と食育への想い

創業60年、職人の技と品質を守りながら、店舗展開といった新業態へ挑戦中の伊藤さん。小売・飲食・教育の領域と越後屋ブランドがどう融合し進化していくのか、今後の伊藤さんの活躍が楽しみです!