
毎年 3 月 8 日は、女性の権利向上とジェンダー平等を掲げる 国際女性デイ(International Women’s Day) です。制定50周年となった2025年は、国連が示したテーマ「すべての女性と少女のために:権利、平等、エンパワーメント」の下、世界規模で過去最大級の盛り上がりを見せました。たとえば SNS では 2 月 1 日〜3 月 3 日のわずか1か月余りで #IWD2025 ほか関連投稿が5万6,700件を突破し、主要メディアの記事も2万件超を記録――いずれも前年を上回る勢いです。
日本国内でも熱気は高まり、「国際女性デー|HAPPY WOMAN FESTA 2025」は全国で約1万2,000名が来場し、約700メディアに取り上げられる規模へと成長しました。
3 月 8 日は過ぎても、このムーブメントが投げかける「誰ひとり取り残さない社会」の実現は、いまこの瞬間から行動できる課題です。本記事では、女性が自分らしいキャリアを切り拓く選択肢として 「事業承継」 に注目してみます。
経営のバトンを受け取り、リーダーシップを発揮する女性たちのストーリーから、国際女性デイの精神を日常に活かすヒントを探っていきましょう。
女性と事業承継の現状
日本では女性経営者の数が増えつつありますが、事業承継の分野ではまだ多くの課題があります。帝国データバンクの調査によると、女性社長の50.6%が家族からの同族承継で事業を引き継ぎ、35.2%は自身で創業しています。しかし、家業の後継者選びでは男性が優先されがちです。女性のリーダーシップに対する固定観念は、まだ根強く残っていると言えるでしょう。
また、女性が事業承継に踏み切りにくい理由には、育児や介護など家庭内の役割と両立する難しさや、資金調達への不安があります。政府や自治体は女性活躍を支援するための政策を進めていますが、情報の不足や実際の支援体制が整っていないことが課題です。
しかし、女性が事業承継に挑戦することには大きなメリットがあります。例えば、経営承継によって、業務内容や働く時間を柔軟に調整できるため、ワークライフバランスを保ちやすくなる点もそのひとつです。さらに、女性の視点を活かした経営は、地域社会への貢献やダイバーシティ推進へとつながり、新たなビジネスチャンスを生み出す可能性が広がります。
事業承継に成功した女性たちの事例
非営利型株式会社Polaris(ポラリス)の事例
Polarisは、「働きにくさ」という社会課題解決を目指し初代が起業。2代目として事業承継した大槻昌美さんはフォロワーシップ型リーダーとしての道を選びました。創業者のカリスマ性に頼らない組織作りが課題でしたが、メンバーの自主性を育て、業績は安定。新たなサービス展開や地域との連携も進み、企業の持続可能な成長を実現しています。
佐土原人形の事例
「伝統を守りたい」という思いから、200年続く佐土原人形の事業承継に挑んだ下西美和さん。課題は伝統と収益性の両立でしたが、SNSを活用した情報発信や、現代のニーズに合った新商品の開発で売上を増加させ、地域からも愛されるブランドに成長。地域文化の継承とビジネスの両立を成功させました。
ミカエル堂の事例
「地域の味を残したい」という想いで事業承継を決断した老舗パン屋「ミカエル堂」。後継者の大津伸詠さんは、先代から製法を一から学び、発酵や焼き上がりの見極めといった技術習得に苦労しながらも、試作を重ねて克服。
また、廃番となった材料の代替品を見つけ、品質を維持するための工夫を続けました。
さらに、SNSを活用した積極的なマーケティングやクラウドファンディングによって、再開に向けた支援や認知度を拡大。販売体制の整備や価格設定にも工夫を凝らし、安定した収益と地域に根ざしたビジネスモデルを確立しています。
これらの事例からは、女性ならではの共感力や柔軟な経営手法が、事業承継を成功に導く大きな力になることがわかります。事業承継は、単に経営を引き継ぐだけでなく、新しい価値や可能性を生み出すチャンスというわけです。
まとめ
近年注目を集める 事業承継 は、女性がこれまで培ってきた経験やスキルを活かしながらリーダーシップを発揮し、従来のキャリアパスにはないダイナミックな成長機会を手にするための強力な選択肢となっています。
実際に経営のバトンを受け取った女性経営者たちの成功事例をひも解くと、既存の枠にとらわれない柔軟な発想やステークホルダーへの高い共感力が、停滞していた事業を再び成長軌道へ押し上げていることが明らかです。
さらに、彼女たちは地域コミュニティとの協働や社会課題への積極的な関与を通じてブランド価値を高め、結果として売上や雇用の拡大といった実利も獲得しています。つまり事業承継は、単に経営を引き継ぐだけでなく、女性が新しいリーダー像を体現し、ビジネスと地域社会の双方に長期的なインパクトをもたらす、極めて戦略的なキャリアの選択肢と言えるのです。
あなた自身の“らしさ”を活かしながら未来を切り拓く一手として、事業承継というステージをぜひ視野に入れてみてください。